冷え性はなぜ起こる?
女性は約8割、男性でも4割以上の人が、冷え性の自覚があるそうです。その理由は大きく分けて4つあります。
①筋肉量が少ない
筋肉は人体最大の熱産生器官です。さらに、筋肉が伸縮することでポンプのように血液を送り出すので、体のすみずみまで血液を循環させて体を温めます。
女性はもともと男性に比べて筋肉量が少ないため、作り出される熱量が少ない上に、ポンプの力が弱いため、体が冷えやすいということになります。体の末端まで血液が行きにくいため、特に、手足が冷えやすくなるのです。
②ホルモンバランスが乱れやすい
女性は、男性にはない月経、出産、閉経といったライフステージでの変化があり、ホルモンのバランスが乱れやすい傾向にあります。
ホルモンバランスが乱れると、体温調整をしている自律神経が影響を受けて、血液の循環が悪くなり冷え性になりやすいのです。
人によって感じ方はさまざまですが、
▮生理中は体が冷えやすい
▮冷えにより生理痛がひどくなる
という方もいます。
また、女性ホルモンの量がぐんと減る更年期には、冷えがひどくなるという方が多くなります。
③ストレスの影響
社会で生活していく上で…
ストレスはゼロにできません
仕事や家事などに追われてイライラするかもしれませんし、夏や冬には、室内と外気温の差が極端に激しくて、それも体のストレスになります。ストレスを感じると、誰でも自律神経のバランスを崩しやすくなります。
自律神経は…
▮副交感神経:リラックス状態で優位になる
▮交感神経:緊張状態で優位となる
この2つがバランスを保って、体の機能を調節しています。
しかし、ストレス過多の状態が続くと「交感神経」優位の状態が長くなり、体は緊張しっぱなし。末梢血管も収縮を続けて血行不良を招き、冷えた状態を招きます。
④生活習慣の乱れ
現代人の体温は…
▮昼夜逆転の生活
▮朝食抜きなどの食事の時間がバラバラ
このような生活習慣の乱れによって低下しているといわれます。
もともと体温は…
▮早朝が最低でスタート
▮起床して朝食をとるとともに急激に上がる
▮昼過ぎから夕方までゆるやかに上昇
▮夜間に向かって下がっていくもの
しかし、乱れた生活習慣は自律神経のバランスを乱し…
体温調節機能が乱れて
冷え性を招く
また昨今では…
▮夏場はエアコンのきいた室内で冷たいものを食べ
▮冬場は温かい室内でゴロゴロ
このように身体の体温調節機能を使わない生活が主流であり、人間に元々備わっていた体温調節機能が低下している人が増えているのです。
また、ファッション性が優先され、寒い日でも薄着をし、手首・足首・首といった冷えやすいポイントをカバーしていないのも冷え性を悪化させる原因に。
冷え性の症状について
人によって、冷えの感じ方はさまざまです。
▮軽度:冷えを感じるという程度
▮中度:冷えている箇所がこわばりはじめる
▮重度:冷えの箇所にしびれを感じるようになる
ここまで冷えてしまうと、日常生活に支障が起きる「冷え症」と思われますので、中度以上と感じられたらできるだけ早く漢方医などの受診をおすすめします。
漢方では、冷えとともに現れる症状や部位によって、いくつかの冷えの原因を考え、それに合わせた治療が行われます。
▮瘀血:血液がドロドロになって血流障害が起こる
▮気虚:エネルギー不足で熱が産まれにくい、
▮水毒:体内に水分がだぶつく
冷えは血流の流れが悪くなるために起こるので…
▮便秘
▮下痢
▮肌荒れ
▮くすみ
▮頭痛
▮腰痛
▮じんましん
▮アトピー
▮膀胱炎
▮トイレが近い
上記のような症状を誘発することにもなります。また、重篤な病気で冷えることもありますので、「冷えは病気じゃないし」と思わず、不安な場合は医師に相談することです。
冷え性の改善策
冷え性の改善の第一歩は、まず自分の生活を見直すことから始めましょう。
●冷たい飲み物・食べ物を避ける
飲み物は、必ず常温以上のものを摂ることです。寝起きや食前に、白湯をコップ1杯飲むのもおすすめ。内臓が活性化することで体が芯から温まります。
●糖質多めの飲食を軽減
中年以降に起こる冷え性は血管が縮まり血行が悪くなっている状態。つまり動脈硬化の現れの可能性があります。
糖質を摂り過ぎて、血中の血糖値や中性脂肪が増えると血管は詰まりやすくなるので、糖質コントロールをしながら、熱を産生するたんぱく質や質の良い脂質を摂ることです。
●身近なところから運動を始める
身体の熱を作るのは筋肉ですから、階段を利用するなど、できるだけ日常でも体を動かすようにしましょう。
〇栄養をバランスよく摂る!
冷え性の改善策として最も有効なのは…
バランスのよい食事を
しっかり摂ること
食事で摂ったエネルギーの8割は熱となり、これを「食事誘発性熱産生」といいます。
人間の身体で行なっている3種類の代謝
▮活動代謝
▮食事誘発性熱産生
▮基礎代謝
の一つです。食事をすると、栄養素の一部は体熱となって消費します。食事の後で体温が上がるのはこのためです。
この消費するエネルギーはたんぱく質がもっとも多く、たんぱく質のみを摂取した時には…
▮摂取エネルギーの30%
▮糖質のみの場合は約6%
▮脂質のみの場合は約4%
通常の食事はこれら三大栄養素が混ざっているので約10%になると言われています。
たんぱく質を多く含む食品は…
▮肉
▮魚
▮卵
▮チーズ
▮大豆製品
これらの食品を食事をベースに、毎食必ずたんぱく質を摂取するように心がけましょう。1日に動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の両方を摂ることが推奨されています。
またよく噛んで食べることで、食事誘発性熱産生は高くなりますので…
一口30回を目安に
よく噛んで食べましょう
特に、胃腸の弱い冷え性さんには、よく噛むことがおすすめです。
冷え性の改善に良い食事のポイント
食事は朝食を抜かずに3食決まった時間に食べることで…
自律神経のバランスも整います
朝ご飯
朝は食欲がないという人は、自分がおいしいと感じる温度の白湯をコップ1杯飲みましょう。内臓が温まって食欲が出てきます。
昼ごはん
口当たりのよいものからはじめてみると、少しずつ食べられるようになってきます。冷たいメニューはさけ、温かいスープや味噌汁などを。
夜ご飯
夕食をたっぷり食べ過ぎたために、朝は食欲が出ない場合もあります。しかし、食事誘発性熱産生が一番高いのが朝ですから、夕食のボリュームや食べる時間帯を調整して、朝食がおいしく食べられる生活リズムを目指しましょう。
また、生姜や根菜類は体を温める食材です。積極的にメニューに取り入れましょう。
気候に合わせた衣類を着る
ファッション性ばかりを優先して洋服を選んでいませんか? 最近は、夏なのに冷房が効いて涼しかったり、冬でも暖房が効いて暖かいという環境も少なくありませんから、外気温との差が激しいために、体がついていけないという環境がたくさんあります。
夏でも…
▮薄手のカーディガン
▮ストール
こうしたふとした寒さに対策する着衣を常備しておきましょう。職場の温度が低過ぎる場合は…
▮レッグウォーマー
こうしたもので足首を温めるなど、冷えを防ぐための衣類を準備しておきましょう。
また、夏であっても、薄手で吸湿性がよい下着を一枚着ておくと、汗を吸い取り、冷えを防いでくれます。
また、吸湿性のよい下着は、冬場は冷気が直接肌に触れるのを防ぎ、体温をキープしてくれます。特に、お腹まわりがあたたかいと交感神経の緊張がゆるみ、体の末端の血流が増えて温かくなります。
きついジーンズやストッキング、靴下など、体を締め付けるものは体の血流を妨げて冷えのもとになります。できるだけ、体を締め付けない衣類を選ぶこともポイントです。
きつめの靴も、足の血流が悪くなり冷え性は改善できません。冷え性改善のコツを踏まえた上で、ファッションを楽しみましょう。
筋肉をつける
体を鍛えて筋肉量を増やすことは、冷え性改善にとても有効です。
体の中で一番大きな筋肉は「太もも」。スクワットは、太ももの前と後ろ、ふくらはぎを鍛えることができますから、「トイレに行くたびに、スクワット10回」など、生活の中に組み込んでおくのがおすすめです。
また、ふくらはぎは、末端の血液を心臓に戻すポンプ作用を担っています。足先が特に冷える人は、かかとの上下運動を心がけましょう。
ウォーキングなどの有酸素運動も効果的です。運動が苦手な人は、買い物に行く時は歩幅を大きく早足にしたり、エレベーターやエスカレーターを減らして階段を使うなどを心がけるだけでも、筋肉を刺激できます。
入浴で体を温める
冷え性の改善には、夏場でも40〜42度のお湯で、全身つかる習慣をつけましょう。肩までしっかりつかり、時間は5分程度でも。ぬるめのお湯で30分ほどつかる半身浴も温かくて気持ち良いものですが、上半身が冷えるため冷え性改善にはおすすめできません。
短時間で、しっかり体を内臓の芯から温めて筋肉のコリをほぐし、全身の血流を促しましょう。
なかなか入浴する時間のない人は、浴槽に浅くお湯をはって、足湯だけでも行うと、全身が温かくなります。洗面所のシンクにお湯をいれて、手からひじまでをあたためる「ひじ湯」も、簡単に体を温めることができます。
コメントを残す